毎年、新年に何枚かキャンパスを購入して、いつもイメージが浮かんでくるまでアトリエのイーゼルに出して置いてあります。今年も横目で見ながらなかなかイメージが近くまで出てこない感じで過ごしていました。一年の前半はインプットの時期で、季節の巡りと共にアウトプットしてゆく感じでしょうか…
日常生活の中では、創作から程遠い時間も多く、静かに自分と向き合う時間を作れなかったのもあるかもしれません。
今年も嬉しいことも、悲しいことも、公私共にたくさんの出来事が周りにあり、まるでジェットコースターに乗っているようなそんな毎日です。
時間の流れもとても早く感じることが多く、休日も何もしなくても過ぎてゆく時間。創作する時間を持つことは、自分の中の時を止め、誰でもない自分と静かに向き合う時間。
今年も少し涼しくなって来たある晩、急に描こうと思い立ち、何が出てくるか分からないけれどアクリル絵の具用の下地材を画面いっぱいに塗りました。次の日の朝にブルーを塗りたくなり何十種類もある青の岩絵の具を塗り重ねてゆきました。
そこからようやく姿を現してくれたのは、龍の姿でした。
龍は自分からは程遠い存在のような気がしていて、描こうと思ったことは今までありませんでした。
龍の存在について、そこから色々調べ、本を取り寄せ自分の中の想像を膨らませてゆきました。
描きながら、次々と見える色が変わってゆき、何度色を重ねたか分からない位に幾重にも塗り重ねてゆきました。
龍の顔も描き込む度に表情が変わり、これでいいと思って筆をおいて、しばらくすると又違う表情が見えて…描く側の自分が龍のいる場所に近づいてゆく感覚で描いていました。
いつもは、そこにあるエネルギーをつかまえるようにキャンパスに描き出す感覚なのですが、今回は自分がその場所に近づいてゆく不思議な感覚を覚えました。イルカの絵を描いた時も同じ感覚を覚えた気がします。
龍は一般的なイメージでは、龍神様を想い浮かべることも多いと思います。また、水墨画の世界での力強い威厳を持った存在ではないでしょうか。
描きながら、最初に龍の姿が浮かんで来た時に、描けるかなと思ったのが本当の所です。人智を超えた所で自然界を司る存在
のイメージが強く、構えて向き合いかける自分を感じ、少しの間筆を置きました。
描く存在が見せてくれた景色は、水墨画の世界ではなく、虹色の光輝く世界でした。
ブルーで描き始めたのですが、色を塗り重ねてゆく度に七色に色は変わり、とうとう完成した絵は光溢れる七色の龍でした。
龍が虹なのかなと思いながら描いていたのですが、描いていたのは、虹色の龍が光と一つになる瞬間だったのかもしれないと感じています。きっと光になる瞬間を見せてくれたのかもしれません。
描きながら虹色の龍が伝えてくれたメッセージがあります。
すべての存在は虹の様に様々な色に見えるけれども、いつか光として一つになる瞬間がやってくるのだということ。
一つになる時にエネルギーの渦が出来、嵐のように感じる瞬間があるかもしれないけれど、それは破壊ではなく一つになる為のプロセスでしかないということ。この世に肉体を持って生まれ、傷つき癒すことを繰り返す中で皆最後は光となってゆくこと。
その先にある世界は光であること。
不思議な表現の仕方かもしれないのですが、先にある世界を見せてもらえたことで、肉体を持って生きてゆくことの怖さがなくなりつつある、そんな感覚が今の自分の中に生まれています。
音楽が聴覚を通してエネルギーを伝え、そこからイメージをくれるように、絵が視覚を通して伝えているのはそこに確かにあるエネルギーなのだと思っています。
この絵を目にして下さった方に、私が描く中で見て感じた何かが少しでも伝わりますように。
龍がくれた光が誰かを導いてくれる灯となりますように。
胸いっぱいの愛を込めて。
The Circle of Rainbow
虹の羽衣まといし者達は 飛べると信じ両手を拡げる
同じ色なきこの世界で 混ざりあい ぶつかり合い 虹の光は円を描く
それぞれが、己の輝き見つけし時
そこにあるのは大きな大きな虹の渦
虹色の光のその先に あなたは何を視るのだろう
包み込む光が視えたなら それがあなたの探していた場所
いつか皆が還る場所
